2006年のひのき屋は「トラベリングバンド」として新たにスタートした年となった訳ですが、今年を振り返って印象に残っているできごとは?

(ソガ直人)なんかやっぱブラジルって言ってしまうよね。

(しまだめぐみ)そうだよね、やっぱりブラジルだよね。なんかね。なんでかな?

(ソガ)やっぱり、期待してたのかな。自分たちも。

(しまだ) 2回目だしね。実は同じところに2回行くのって初めてじゃないかと思うんだけど。

(ソガ)あ~。外国はね。

(しまだ) 去年があまりに良い条件でやれたでしょ?楽器もいっぱい持って行けたし※1。だけど今回は楽器も最低限のものしか持っていけなかったし、だからあまり期待してなかったんだよね。

(ソガ)ブラジルは?

(しまだ) うん。だけど準備を進めていく中で、ある程度の本数のライブがやれるってことと、それがひのき屋単独のライブだってこと、そして今日本でやってるそのままの音で勝負するんだってことが、どんどん楽しみになっていったんだ。

(ソガ)いやぁ、良かったよ。っていうか、今年は同じ作品でちゃんとツアーするってことがなかったから。なんか単発の企画が多かったしさ。ブラジルでそれができたのが良かったかな。

(しまだ) そうだよね。日本ではほんと単発ものばっかりだったかも。

(ソガ)会場の建物もさ、面白かったよね。日本では建物に入った瞬間にわくわくするって感覚があまり味わえないけど、向こうではそれがあるっていうのがやっぱ面白いっていうか。

(しまだ) すごい良かったよね。だから建物自体が自分の思い描くトラベリングバンドのイメージにすごく合っていて、照明とか全体的なイメージを作り込みたいっていうか、実際ある程度作り込めたし。う~んやっぱハコ(建物)の持つパワーってあるよね。すごく。やっぱオペラハウス良かったし。

(ソガ)良かったね。

(しまだ) あとさ、ホームページにのってる、ワタナベくんがお客さんと握手してる写真。

(ソガ)うんうんこれ[写真右]でしょ?

(しまだ) そうそう。あれってさ、お客さんステージに足掛けて観てたじゃん。それが最高に面白いよね。劇場なのにそれだけくつろいで観てくれてるっていうか。あ、でね、昨日サンジョゼ会場の音源聴いてたら、1曲ごとのお客さんの反応を音で聴くことができて面白かったんだよね。ああ、この曲でこんな反応があったんだぁって改めて知るっていうか。なんかさ、すべてが面白かったよね。お客さんの反応にしても何にしても。まさに旅をしながらっていう感じがさ。

 

 

 

 


 

ブラジルはかなり満足だったようですが、国内で言えばNHK特集番組※2の取材なんかはいかがでしたか?

(ソガ)う~ん、撮影現場で毎日コメントを求められる訳じゃない? 「なんで函館で音楽をつくってるんですか?」とか「なんで海外に行くんですか?」とか、それって普段あんまり言葉にすることってないんだよ。そういう質問ってあんまり受けないから。だからあの期間は一生懸命ことばを紡ぎだしてたな。

(しまだ) そうかもね。

(ソガ)あの時に言ったことっていうのが意外とスタートになっていることもあるなぁ。ディレクターさんに「函館好きですか」とかいきなり聞かれるんだよね。「どうなんだろう?」って。そんなことあんまり考えてもいなかったんだけど。やっぱ好きなのかな? とかね。そう考えてくと、田舎の小さな街である函館と世界各国の小さな田舎の街とが直接交流して、盛り上がっていくスタイルっていうのも良いなって改めて思ったし。

(しまだ) 東京にそれほどこだわってる訳じゃないっていうか。

(ソガ)これってトラベリングバンドのスタイルにもつながってくるでしょ?

(しまだ) そうだね。私たちブラジルでも首都のリオとか、行ってないもんね。フランスもパリには行ってないし。全部そうだもんね。

(ソガ)だからあの時は言わされたようなコメントだったけど、実際自分たちが行った先々の人々が、ひのき屋の音楽を聴いて函館に行ってみたくなったとか、北海道に行きたくなったとか、ライブが終わった後に言ってもらえるのが一番嬉しいし。実際に来てくれたりしたらもっと嬉しいし。

(しまだ) そうだね。

(ソガ)あと漠然と函館とか北海道とか言うより「プラタナスの樹」※3っていうひとつの象徴があるのが良いかもしれない。具体的な曲があるし、実際にひのき屋事務所の前に立ってる訳だから。まぁでも曲のイメージとか空想は、現実より膨らんじゃうから、実際に見に来てもらわなくてもいいかな、とは思うけど。

(しまだ) 私も。みんなに来て欲しいとは思わないな。だってそれぞれにそういう場所って、あると思うし。

(ソガ)音楽ってそういうイメージが大事だしね。

(しまだ) なんか面白いのは、ブラジルであの曲を演奏してる時はすごく函館の情景を思い出したんだよね。だけどこっちに帰った来たら、ブラジルを思い出したんだよね。

(ソガ)それって面白いね。

(しまだ) 函館以外の場所で演奏する時はさ、前半は函館の情景が浮かぶんだけど、後半になってくると行った先々の映像が浮かんで来て、それで後半の早いとこではいつもお客さんの喜ぶ顔が浮かんでくるんだよ。演奏していて情景が浮かぶ曲って今までなかなかなくて、これって新しい側面かなって思うんだよね。だからやっぱり「プラタナスの樹」がトラベリングバンドの象徴の曲かなって。

 

 


そもそも「プラタナスの樹」が生まれた背景というのは?

(しまだ) 去年の3月に「そがナイト」※4ってあったじゃない? あれがトラベリングバンドの骨格を作ったんじゃないかなと思うんだけど。

(ソガ)あ~なるほどねぇ。曲の作り方で言えば、プラタナスの樹のメロディーが生まれた瞬間に、プラタナスを見てた訳でもないんだよね。ふと出て来たメロディーを笛で吹いてると、いろんなイメージがわいてくる訳でしょ。そのなかのひとつがプラタナスの樹だったっていう気がするんだよね。なんかそういう気がすごくする。

(しまだ) あの時いろんな音源を録りためてたじゃない? いろいろ聴かせてくれたでしょ。MDで。あの時はさ、プラタナスの樹はたくさんある音源の中のひとつでしかなかったよね。ここまで象徴的な曲になるとは誰も思ってなかったと思うんだけど。

(ソガ)ぼくも思ってなかった。そもそもさ、あの企画ってどうして生まれたんだっけ?

(しまだ) 確かメンバーが1人欠けて、4人でなんとかやらなければって年じゃなかったかな。何か新しいことを始めなければいけないって。もう1人新たなメンバーを募集する気にはなれなくて、とにかく4人で作ろうと。それにはそれまでのたいこの迫力で押してたステージは難しい。よりメロディー性のある曲をってことだったと思うんだけど。

(ソガ)実はそれまでも「星と舟」とか、そういう可能性自体はあったんだと思う。ライブで星と舟をやってる時間帯って、お客さんが今までとは違った聴こえ方っていうか、感じ方をしてくれているっていうか。言い換えればお客さんも演奏者も、ある想像の世界に陶酔するっていうか。そういう世界観もライブの贅沢な時間のうちだなっていうのがあって。ああいう世界をもうちょっとやってみたらどうかなっていうのも、あったんじゃないかな。

 

 


そがナイトの成果は?

(ソガ)やっぱ最初はプレッシャーだったんだよね。作曲、出演、プロデュースって全部自分だったから。

(しまだ) でもあの時すごい勢いで曲が生まれたでしょ? 何曲ぐらい?

(ソガ)今やってる曲はほとんどあの時生まれたんじゃないかな。やってない曲も入れたら12、3曲かな。「お馬が走る」とか「足踏みダンス」、プラタナスの樹もそうだし。「天空の鳥」とか、「カーテン」、とかね。

(しまだ) あ~、天空の鳥! 私あの曲大好き。笛のいい感じが出てると思うんだよね。小さい空間では絶対やりたい。プラタナスの樹とか足踏みダンスが生まれてるから、今の柱になってる曲はやっぱりこの時生まれたんだね。

(ソガ)あの時にCD『風のゴルモン』の収録作業してたんだよね。それで急遽プラタナスの樹を入れたんだよ。3曲目に。

(しまだ) そう、急遽ね。おまけみたいに入れたんだよ。

(ソガ)あれは意外とそがナイトで評判良かったからだよ。

(しまだ) そのあとのライブでも評判が良くてさ。どんどんライブの中心曲になっていったんだよね。そして2006年ではそれまでのドッコイダンダカを押しのけて、プラタナスから足踏みダンスへっていうのが、ライブの終盤の流れとして定着するようになった。トラベリングバンドとしての形というかね。

 

※1 2005年のヨーロッパツアーは国際交流基金の主催事業ということもあり、ほぼ全ての楽器を持っていくことができた。
※2 NHK「ふるさと発ドキュメント」。北海道の初回放送日は3月24日。
※3 ひのき屋事務所の前に1本だけ立っている象徴的な樹で、同名の曲がCD『風のゴルモン(CCDZ-1130)』『ひのき屋・トラベリングバンド(DDCZ-1250)』に収録されている。
※4 ひのき屋プレミアムライブ。2005年3月18日函館あうん堂で開催。ソガ直人が初のソロ公演に挑んだ。

 

後編へ続く

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ひのき屋
1998年に函館が生んだ「トラベリングバンド」。主なメンバーはソガ直人、しまだめぐみ、雨宮牧子、ワタナベヒロシの4人。旅人としての心象風景を、篠笛の息づかい、太鼓の振動、そしてギターの音色を中心に表現します。

アジアと西洋、過去と未来。時空を自由に行き来するひのき屋。彼らは、人々の冷え切ったこころを熱くします。個々の音がひとつに響く、伝統とオリジナルのジャパニーズ・ワールドミュージック。永遠の旅人・ひのき屋の物語は、行く先々でうねりとなって、世界を変えていきます。アジアも、ヨーロッパも、イスラムも。旅がつづく限り、僕たちは変わり続ける。代表曲は「プラタナスの樹」「足踏みダンス」。北海道新聞社・第8回「北のみらい奨励賞」受賞。

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ひのき屋、2年ぶりの新作。
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2010年8月4日全国発売!
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バルカンの月
バルカンの月
ヨーロッパの街角。ホテルの部屋の中。ふと浮かぶいくつものメロディー・・・。街の雑踏、鳥の声、教会の鐘の音。ソガ直人が紡ぐ音のものがたりが今ここに。

だるまさんがころんだ
だるまさんがころんだ
親子でもたのしめるひのき屋ソングの決定版♪待望のワタナベ唄ものシリーズ第1弾。おとなもこどもも、曲がかかれば、楽器片手に、手拍子、かけ声、足拍子。こころもカラダも、わくわくドキドキ。たのしい時間のはじまりだー!!